召命を生きるトップ  <  N0.5 トマス・エセイサバレナ神父 「叙階60周年ダイヤモンド祝を迎えて」

 

2013年8月15日、盆休みの3日目にトマス・エセイサバレナ神父様をロヨラ・ハウスにお尋ねしました。エセイサバレナ神父様は2013年3月6日に満90歳の誕生日を迎えられ、さらに7月15日には叙階60周年のダイヤモンド祝を迎えられました。今年の夏は立秋を過ぎてから急に暑くなり、訪問した日も35度を超える猛暑日でした。冷房の効いた面会室で3分程待っていると、いつもの柔和な神父様がハワイの名前入りTシャツを着て入っていらっしゃいました。上智大学ではたびたびお目にかかっていましたが、まずは私の自己紹介から始めました。その中で私に洗礼を授けていただいたロバート・フォーブス神父様が、エセイサバレナ神父様と同時期に上智へ赴任された事を初めて知り、感慨深い思いでした。 そしてインタビューの開始です。

●ご出身は?

最初に自己紹介としてご出身を伺いますと、「バスクです」とおっしゃいました。イグナチオ・ロヨラの出身地であり、多くのイエズス会員を輩出している土地です。私も出張で行った事がありますが、スペインの地にあって、いまだにバスク語を伝え続けている場所です。その中で、ビスケー湾に面した風向明媚なサン・セバスティアンのご出身です。

●ローマからの手紙

ご自分の生い立ちを語られましたが、1947年4月18日午後4時30分にローマからの手紙が届きました。内容は「日本に派遣される可能性があるが、承諾するか」という問いかけであったそうです。それまで神父様は日本の事は殆ど考えた事はなかったという事です。又当時日本で活躍していたイエズス会の神父様達はドイツ人が多かったそうです。確かに聖イグナチオ教会の初代主任司祭であり、上智大学の学長を務めたホイヴェルス神父様や修練長であったライフ神父様等多くの方がそうでした。しかし第二次世界大戦の敗戦国となったドイツには、日本に司祭を送る余裕がなくなり、その他の国から募集する事になりました。その中で、エセイサバレナ神父様は日本への派遣に同意されました。そして、2ヶ月後の1947年の6月27日11時に日本へ行くことが決まりました。後で知った事だそうですが、ローマから手紙を受け取った15人が全て日本へ行く事を同意していたという事です。でもエセイサバレナ神父様が1人選ばれました。そしてドイツ人以外のイエズス会員が日本に派遣された第一回生として17人と共に活動を始めたそうです。先にお名前が上がったフォーブス神父様やエバレット神父様などが一緒でした。でも今生きているのはご自分1人であると語られました。


●召命のきっかけは?

小さい時からイエズス会の環境下にあり、7歳の時には自然に神の望みとして感じていたそうです。そして1940年5月3日にロヨラに行ってハイスクールに入学した17歳の時、具体的に神父になる事を決意されました。とても自然体であった事が印象的でした。

●ご趣味は?

趣味は若い人と話す事。コーラスや聖歌隊と歌を歌う事。そしてサッカー。又日本に来られて短波放送を受信する為に、秋葉原へ行き自作のラジオを作ったりしたそうです。私が学生時代の40年程前、SJハウスの屋根に大きなアンテナがありました。とても不思議に思いましたが、そのアンテナを作った神父様の一人がエセイサバレナ神父様だったようです。又言語にとても興味を持たれていました。神父様が10歳のころ、お父様が買われたラジオでイタリア語の放送がほとんど判ったのも印象的だったそうです。さすがにラテン語を長く教えられていたエセイサバレナ神父様ならではのエピソードです。

●召命の危機について

召命の危機についてお尋ねした所、「自分は1秒でも自分の司祭としての生き方、神への信仰を疑った事は無い」とはっきりおっしゃいました。この信念は私たち日本人信者が是非見習いたい所です。 一方楽しかった事としては、信者の指導者として一緒に語ったり、遊んだりした事が最も楽しかったそうです。神父として信者との会話・相談などに熱心に答えられていた神父様のお姿が彷彿とされます。 最後に司祭や召命を考えている方々に語られました。特に強調されたのは、「時間をかけて良く考え、自分を自ら試す必要がある。一時的感情に左右されない事が大切である。」 「例えば黙想会に参加して感激したのが動機などはだめである。その為には司祭などと心から打ち解けて相談できる関係を作る事が大切である。一人だけで考えていたのでは、 司祭になれない。」「最近の若い人は苦しみに慣れておらず、すぐ失望する。又トレーニングに慣れていない。体験も知識も広いが浅い。とにかく深く深く考える事が大切である。」と今までの話とは異なり、熱弁で語られました。 インタビューを終えて、まず感じた事は、90歳を過ぎた方とはとても思えず、過去のご記憶も現在の御意志も明確でした。穏やかな内に、司祭としての揺るがないお心に触れ、私自信もとても勇気付けられました。そして信者との話をとても大切にし、またご自身も楽しみにしておられる様子が感じられました。このコラムをお読みの方、ロヨラ・ハウスは西武新宿線の武蔵関から歩いて8分と少し遠いのですが、是非エセイサバレナ神父様にお目にかかり、お話しをされる事をお勧めします。ただ事前に連絡を取ってご予定を確かめてからご訪問下さい。