今年の春から秋にかけて、私の身近なところでは毎日のように ♪ありの~ままで~♪ という歌声が響いていました。テレビは勿論、買い物に出かけた先でも店内放送で繰り返し流れていました。私が働く幼稚園の子供達も年少児から年長児まで登場人物のエルサになりきり、せっかくお母さんが結ってくださった髪のゴムをほどき、 「キツイ縛りから解放されて、気持ちイイーッ!」と言わんばかりに喜びを全身で表現するのです。
そんな中、私は、クラスの3人の年少児が「ちびっこカラオケ大会」に出場するということを知りました。 修道院の近くですので私も2人のシスターを誘ってその神社の境内の席に陣取りました。 そこには近所の子供達が大勢来ていて、驚いたことに出演の16組中8組がアナと雪の女王の「Let It Go」を歌うというのです。 司会のおじいさまは、「ハイ、次も『ありのままで』です!」と繰り返し出場者を送り出していました。
これ程までに子供(女児)の心を釘付けにするものは、いったい何なのでしょうか? 私は 何度も何度もこの曲に触れるうちに、小さな子供の生き生きとした表情に心地良ささえ感じるようになりました。 ふと浮かんできた聖書の箇所は、「これらのことを知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しになりました。」(ルカ 10・21)です。 大人は歌詞の意味を理解し、そこに自分の境遇と照らし合わせて悩みや苦しみから解き放たれたい願望を抱くに至るのでしょう。自分に叶えられない願望をエルサが成し遂げることにより、自分自身を投影させるのかもしれません。 まさにそういう現実が今の社会にあります。本当にタイムリーだったと思います。一方で、カラオケのモニターの絵だけを見て歌に酔いしれている幼い子供はというと、主人公のエルサが心を閉ざし、抱えてきた苦しみや悩みから解き放たれ、彼女の本来の姿を取り戻すということを本人になりきって、全身を使って模倣するのです。それこそ、大人だったら恥ずかしくなる程に夢中になるのです。
さて、そろそろ運動会のお遊戯をどうしようか・・・と考え始めた年長の担当のチームは、「今年はこれしかないでしょう!」と、子供の魂の叫びを取り入れ、下準備を始めました。 子供達の意見を聞きながらお遊戯を一緒に作り上げていく中で、今やこの幼い子供達にもいろいろな試練があることが見えてきました。 練習の期間は、隊形移動を何度も繰り返しやってみました。休憩時間にもかかわらず、数人がまた園庭の真ん中で円になって自主的に踊る光景もありました。 「もう疲れた~」と言うのかなと思う時も、皆で協力してそれを乗り越えました。私達大人には、人には言えない悩みや苦しいことがいつも付きまとっていますが、この子供達には、「それを神様に任せていいんだよ~」とでも言っているかのように私達を励まし、感動をさえ与えてくれる力がありました。ありのままを精一杯に全身で表現しきった子供達の笑顔を見た時、私は、子供は知らないうちに周囲に福音を告げ知らせていたのだと気付いたのでした。 ありのままに生きる子供は、神様からのメッセージを全身で受けとめ、また全身で周囲に発信し続けているのですね。いろいろと難しい課題の中に生きている私達ですが、時には少し立ち止まって、子供から生きるヒントを教えてもらいましょうか。
<完>
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